ソラノミチ

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夕暮れの駅のホームに黄色い線がまっすぐ伸び、架線の柱と街灯が並ぶ写真

米住宅着工の「5.2%減」は、誤差の範囲だった。±11.8%と*印の読み方

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米国の住宅着工が「前月比5.2%減」と出た日、見出しだけを見ると米国の景気が冷えたように読めます。けれど発表文には、その数字のすぐ後ろに「±11.8%」と、小さな*印が付いていました。この2つを読むと、5.2%減は「減ったとは言い切れない」数字だったことが分かります。

僕が扱う通貨ペアはドル円とユーロ円の2つだけで、米国の統計はドル円の材料として毎月流れてきます。全部を追う時間はありません。だから、数字そのものより先に、その数字がどこまで信用できるかを発表文の中で確かめるようにしています。

この記事の立ち位置

住宅着工の数字から相場の向きを予想する記事ではありません。米国勢調査局(Census Bureau)の発表文に書かれた「信頼区間」と*印の意味を読み、速報値をどこまで信じてよいかを確かめるための記事です。

9月の住宅着工は、年率122.1万戸だった

2026年10月20日、米国勢調査局と住宅都市開発省(HUD)は9月分の「New Residential Construction」を公表しました。住宅着工、着工許可、完成の3つの数字が1枚にまとまった発表です。どれも季節調整済みの年率で、1か月の件数を12か月分に引き延ばした値で書かれています。

項目(2026年9月)年率前月比前年同月比
着工許可1,400,0000.2%減3.0%減
住宅着工1,221,0005.2%減(±11.8%)*7.4%減(±11.5%)*
うち一戸建て859,0004.6%減(±10.0%)*―
完成1,192,0002.2%増(±10.8%)*14.0%減(±11.1%)

着工は8月の改定値1,288,000から1,221,000に減り、前年の1,319,000と比べても少ない。数字の並びだけを見れば、はっきり減っています。ただ、表の中には「±」の付いた数字と付いていない数字、*印の付いた数字と付いていない数字が混ざっています。読むべきなのはそこでした。

夕方の光が差し込む、アーチ屋根の大きな駅の構内の写真

「±11.8%」は、90%信頼区間の幅です

発表文の後ろの説明書き(EXPLANATORY NOTES)に、括弧の読み方がそのまま書かれています。たとえば「2.5 percent (±3.2 percent) above」とあれば、実際の変化率は-0.7%から+5.7%の範囲にあるとみられる、という意味です。範囲はすべて90%信頼区間で、標本から推計していることによるぶれだけを見ている、とも書かれていました。

住宅着工は、全部の工事を数えた数字ではなく、調査で集めた標本から推計した数字です。だから、どうしても誤差が出ます。「±11.8%」はその誤差の幅で、5.2%減という推計値は、実際には-17.0%から+6.6%のどこかにある、という読み方になります。

-17.0%と+6.6%。下にも上にも開いています。減ったのかもしれないし、増えたのかもしれない。5.2%減という1つの数字からは見えない幅が、括弧の中に入っていました。

計算は引き算と足し算だけです。推計値の-5.2から幅の11.8を引くと-17.0、足すと+6.6。紙の端でもできます。幅が推計値より大きければ、範囲は必ず0をまたぎます。9月の着工は、推計値の5.2より幅の11.8のほうが2倍以上大きかった。それだけで、この数字の扱い方は決まります。

*印は「増えたか減ったか分からない」という印

説明書きには続けて、範囲が0を含まなければ変化は統計的に有意、0を含むなら有意ではなく「増えたのか減ったのか定かでない」と書かれています。表の下の注記はもっと短く、*は90%信頼区間が0を含む、つまり実際の変化が0と違うと結論づける統計的な根拠が足りない、という意味でした。

9月の住宅着工の前月比にも、前年同月比にも、この*が付いていました。前年同月比の7.4%減(±11.5%)も、範囲は-18.9%から+4.1%で0をまたいでいます。1年前より減ったとさえ、この発表からは言い切れないことになります。

ニュースの見出しには、この*印は載りません。載るのは「5.2%減」の方です。発表文を開かずに見出しだけで判断すると、統計が自分で「分からない」と言っている数字を、分かったものとして受け取ってしまう。そこが一番の落とし穴だと思っています。

草が生い茂った古い線路と、その先に並ぶ架線の柱の写真

同じ発表の中に、言い切れる数字もあった

表をもう一度見ると、*の付いていない数字が1つあります。完成の前年同月比、14.0%減(±11.1%)です。範囲は-25.1%から-2.9%で、0を含みません。9月の発表の中で、減ったと統計的に言えるのはこの数字でした。

着工の5.2%減は言い切れず、完成の14.0%減は言い切れる。どちらも同じ日の同じ1枚に載っていて、違いは括弧と*印だけです。数字の大きさではなく、幅と比べて初めて、どの数字に意味があるかが決まります。

本文の着工許可の行には、「±」が付いていませんでした。同じ1枚の発表でも、行によって書き方が違います。括弧があるかどうかを、行ごとに見ていく必要があります。

一戸建てと集合住宅で、数字の動き方が違う

住宅着工の1,221,000戸は、一戸建てと集合住宅を足した数字です。発表文はその内訳も出しています。一戸建ては859,000戸で、8月の900,000戸から4.6%減(±10.0%)。こちらにも*印が付いていて、減ったとは言い切れません。5戸以上の集合住宅は349,000戸でした。

着工許可の側でも内訳が出ています。一戸建ての許可は845,000戸で、8月の880,000戸から4.0%減。5戸以上の建物の許可は503,000戸です。許可が出てから着工までには時間がかかるので、許可の数字は着工の少し先を映す、と説明されることが多い数字です。

完成の内訳も見ておきます。一戸建ての完成は840,000戸で、8月の861,000戸から2.4%減(±10.8%)、ここも*印付きです。5戸以上の建物の完成は339,000戸でした。前年比で有意に減っていた完成の14.0%減は、合計の数字についての話で、内訳ごとの前年比は本文には書かれていません。

合計で言い切れないものは、内訳に分けるとさらに言い切れなくなります。標本が小さくなるほど、推計のぶれは大きくなるからです。見出しの「一戸建て4.6%減」を見かけたら、まず括弧の幅を探す。順番はいつも同じです。

速報は、翌月に書き換わる

もう1つ、速報は確定値ではありません。9月17日に出た8月分の発表では、住宅着工は1,275,000、完成は1,128,000でした。それが今回の9月分の発表では、8月の改定値として着工1,288,000、完成1,166,000に書き換わっています。着工は約1.0%、完成は約3.4%の上方修正です。着工許可も1,394,000から1,403,000へ、約0.6%上がりました。3つとも、1か月後には別の数字になっていたことになります。

8月分9月17日の速報10月20日の改定値
住宅着工1,275,0001,288,000
完成1,128,0001,166,000
着工許可1,394,0001,403,000

説明書きによれば、着工許可、住宅着工、完成の季節調整済みの速報値は、平均で3.8%以内の範囲で改定されます。今回の9月の数字も、11月18日に予定されている10月分の発表で書き換わるはずです。5.2%減という比べ方そのものも、前月の数字が動けば変わります。

ガラス窓越しに滑走路が見える、人のいない空港のロビーの写真

手帳に足したのは、2行だけです

米国の統計を読むときのために、手帳の最後のページに2行を足しました。

住宅着工の数字が出た日に、ドル円がどちらに動くかは分かりません。ただ、統計が「分からない」と書いている数字を材料にして、自分の判断を急がないことはできます。次の確認は11月18日、10月分の発表です。そのときは、9月の1,221,000が何に書き換わったかも一緒に見るつもりです。速報を1回で信じず、2回目の数字と並べてから扱う。統計の側がそう書いているのだから、こちらも同じ速さで読めばいいと思っています。

涼
涼(りょう)
ノマド・専業トレーダー。拠点を一つに決めず暮らしながらFXと向き合っています。派手な成功談も根拠のない自由論も書かず、お金と働き方の現実的な距離感を等身大に綴っています。

FX(外国為替証拠金取引)は為替相場の変動により損失が生じるおそれがあり、預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります(元本保証はありません)。本記事は情報提供・読み物を目的としたものであり、特定の取引や口座・金融機関の利用を勧めるものではありません。記載内容は米国勢調査局「Monthly New Residential Construction, September 2026」(https://www.census.gov/construction/nrc/current/index.html、2026年10月20日公表)と同「August 2026」(2026年9月17日公表)を2026年10月22日に確認したもので、信頼区間の範囲(推計値±幅)は発表文の数値から当サイトで計算しています。FXを利用する場合は、金融庁に登録された業者かどうかを確かめたうえで、ご自身の判断で行ってください。本サイトはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用しています。写真:Openverse経由のパブリックドメイン(CC0)素材。